
LTSS設計思想セパレートストッキング開発の裏側── RxL 製品化への挑戦 セパレートストッキング特集 第7回
2025.07.12
「切って履く文化」から「切らなくていい時代」へ──。
その変革の裏側には、“履き心地”と“品位”を両立するための挑戦がありました。
今回は、LTSS設計思想を基にしたセパレートストッキングが、どのように製品化されたのか。
そして、靴下メーカーRxLとの共創、さらにサカストテープ®というもうひとつの開発の流れに迫ります。
目次
セパレートサッカーソックスを「完成品」にする難しさ
セパレートサッカーソックス(足部+下腿部)という構造自体は、近年、多くの現場で試されてきました。
しかし、そこには「着用感が悪い」「ズレる」「巻きすぎて苦しい」といった接合部の問題が常につきまとっていました。
単に分けただけでは“未完成”──
LTSS設計思想では、分けることと同時に「どうつなぐか」「どう仕立てるか」が製品化の重要な鍵になると考えてきました。
なぜ、RxLだったのか──再挑戦のタイミング
セパレートストッキングの開発に際して声をかけたのが、**靴下専業メーカーRxL(武田レッグウェアー社)**です。実はRxLは、かつて一体型のサッカーソックスを製造していた歴史がありましたが、長らくこの分野から撤退していました。そのようなRxLが、サッカーソックスに再挑戦するタイミングで、LTSS設計思想と出会い、製品化への挑戦が始まります。
この出会いがなければ、LTSS思想の本質に迫るソックスが世に出ることはなかったかもしれません。
RxLとの連携により、ふくらはぎの形状に合わせたリブ編みや裾口の構造設計など、理想の形がひとつずつ形になっていきました。
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サカストテープ®は別ラインでの開発だった
LTSS設計思想の完成には、“つなぎ目”の課題解決が不可欠でした。
そこで登場したのが、サカストテープ®です。
これは一般的なテーピングとは異なり、「巻く」のではなく「仕立てる」という発想で開発された結合のための専用テープ。
しかし、RxLは靴下メーカーであり、テープの製造ノウハウはありませんでした。
そこで、KAKU SPORTS OFFICEが独自にテープ製造会社と協業し、サカストテープ®を実現。
現在はRxLが販売を担っていますが、開発は別ラインで進められたものであり、LTSS = RxL ではないという立ち位置を保ちながら、両者の製品が組み合わさって「完成されたセパレートサッカーソックス」が構成されています。
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LTSS設計思想が目指した“仕立てる”ソックス
LTSSが目指すのは、ただ「切らないですむ」ソックスではありません。
足と脚の構造的・機能的分離に基づいて、必要な素材・厚み・通気性・フィット感を、**部位ごとに最適化する“選べる構造”**を実現することです。
それを成立させるために、
• 足部(セパレートソックス)
• 下腿部(セパレートストッキング)
• 接合部(サカストテープ®)
• 下地サポート(インナーストッキング)
という4つの要素を設計・開発してきました。
共創から始まる「選べるソックス」の時代
今回の製品化は、RxLとKAKU SPORTS OFFICEの協業により実現しましたが、これはLTSS設計思想のひとつの表現形に過ぎません。
今後は、他の靴下メーカーや工場との新たな共創も視野に入れ、セパレートストッキングのより多様な選択肢と進化を追求していきます。
「切らなくてもいい時代」は、誰かひとりの力で訪れるものではありません。
競技会主催者、指導者、選手、保護者、製造、販売──
すべての関係者と共有し、よりよい形を模索していく“共創の文化”が、サッカーソックスの未来をつくっていきます。
さらなる共創者へ
LTSS設計思想は、ひとつのメーカーの専売特許ではありません。
むしろ、多様な現場の声に応え、次なる進化を遂げるための「共創の設計思想」です。
切らなくても、ズレなくて、動きやすくて、快適で、品位もある。
そんな“当たり前”を選べる時代が、ここから本格的に始まります。
LTSS 設計思想セパレートストッキング特集 第1回はこちら
サッカーソックスは“足”だけのものじゃない──LTSS設計思想が語る“脚”へのまなざし
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フットボールクリエイター 角田壮監
足とシューズの最適化で競技者本来の力を引き出すという視点から世界初のサッカーソックスの構造を分離させ完成されたセパレートサッカーソックスLeg Tool Separation Systemを考案。
「競技者本来の力を引き出す」ためにを理念に、グローバルシーンで実績を残している様々な競技のトップアスリートや競技団体のマネジメントやディレクションで培った「競技力向上のための組織づくり」をはじめ、社会にスポーツが持つ有益な効果を生み出すためにスポーツシステムコーディネーター、スポーツプロデューサー、プロジェクトコンサルタントとして、次世代ニーズを見据えた魅力ある競技スポーツシーンの創出に努めている。
KAKU SPORTS OFFICE MISSION
アスリート思考で心豊かな社会づくりをクリエイトする
KAKU SPORTS OFFICEは、「アスリート思考で心豊かな社会を創造する」をモットーに、競技スポーツに関わる個人・企業・団体の活動や事業を、的確な視点で分析します。そして、言語・文化・音楽・映像・活字といった多様な“シンボル”を活用し、人と人、組織と組織、企業と企業、人と組織・企業といったあらゆるつながりの中から、最大の相乗効果を生み出す組み合わせをコーディネート。新たな利益システムを構築するコミュニケーションコーディネーターとして活動しています。また、創業者・企画者としての精神をもとに、理念や目的を共有できるパートナーの育成や、持続的かつ自走可能な組織づくりを支援するシステムコーディネーターとしても貢献。さらに、競技者一人ひとりが本来持つ力を引き出すメンターとして、競技スポーツの発展にも寄与しています。