
LTSS設計思想 着圧インナーストッキング特集|第4回 着圧インナー Buenos Aires 誕生の理由 ── ふくらはぎの自由を支える、“レガースの中”の最前線
2025.07.14
サッカーでは、すねあて(レガース)を覆うソックスが義務づけられています。
しかし、その“義務”が、ふくらはぎの着圧設計を機能不全にしてしまう──。
この構造的課題を解決するために、LTSSは“ふくらはぎの中”にもう一層、インナーを装備するという選択をしました。段階着圧の本質を活かすには、何よりも「設計の自由」が必要です。
本記事では、LTSSがなぜ「着圧インナーストッキング」という構造を採用したのか、その必然性を明らかにします。
※LTSS設計思想における“ふくらはぎ”の役割や重要性については、第1回記事で詳しく解説しています。
目次
着圧ソックスが“効かなくなる”スポーツ──サッカー
段階着圧ソックスは、陸上競技やトレイルランなどで広く活用されてきました。
足首からふくらはぎにかけて圧力を段階的に変化させ、血流を促進し、疲労や筋振動を抑制する設計です。ところが、サッカーではその着圧効果が活かされにくい現実があります。
なぜか?
それは、すねあて(レガース)の存在です。
競技規則により、すねあてを完全に覆うソックスの着用が義務化されており、そのソックスに段階着圧が組み込まれていても、すねあてを挿入することで圧力設計が破綻してしまうのです。
※段階着圧設計の原理と誤解については、第2回記事もあわせてご覧ください。
“外側”ではなく“内側”に──構造の逆転
LTSS(Leg Tool Separation System)は、この構造的なジレンマに対して**「逆転の発想」**で応えました。
ふくらはぎに本当に必要な着圧効果を与えるには、“レガースの内側”にもう一層、専用のインナーを装備するしかない。
LTSSの着圧インナーストッキングは、セパレートストッキングの内側、つまり肌に直接触れる位置に着用されます。
この構造によって、
• レガースの影響を受けない段階着圧の維持
• 筋肉や腱への直接的なサポート
• 表層のソックスに左右されない独立した機能性を実現しています。
※“足部と下腿部の構造的違い”から考えるLTSSの分離構造については、第3回記事をご参照ください。
筋肉を守る、プレーを支える──ふくらはぎの自由のために
ふくらはぎは「第2の心臓」と呼ばれるように、筋肉のポンプ作用で血流を助ける役割を持ちます。
そのため、試合中のパフォーマンスだけでなく、回復や故障予防においても非常に重要な部位です。
LTSSの着圧インナーストッキング(FS-9000)は、
このふくらはぎに“自由”を与えることを目的に設計されています。
• ドイツ製の医療用編み機を使用した超高密度・軽量設計
• スネ側とふくらはぎ側で異なる立体的な編み構造
• 左右別設計による自然なフィット感
• 肌に吸い付くような“素脚感覚”の履き心地
これらのディテールは、見た目だけではわかりません。
しかし、着用した瞬間から、脚の深部にまで伝わる違いがあります。
なぜベージュなのか──色の課題も、設計で解決
サッカーでは、チーム識別のためにソックスの色が重要視されます。
そのため、白いセパレートストッキングの下に濃い色の着圧ゲイターを着用すると透けて見えてしまうことがあり、試合での使用が制限される場合もあります。
LTSSでは、この点にも配慮し、白色のソックスでも透けないベージュカラーを採用しました。
外からは見えないが、確かに“存在する”インナー。
これもまた、機能とルール、審美性を両立するフットボール専用設計の一例です。
二層構造がもたらす「自由と統一」
LTSSのセパレートソックスとセパレートストッキング、そして着圧インナーストッキングの三層構造は、
従来の“一体型ソックス”では実現できなかった多層的な役割分担を可能にしました。
• 足部のインナー(セパレートソックス)
• 足部のアウター(サッカーシューズ)
• 下腿部のインナー(着圧インナーストッキング)
• 脚部のアウター(セパレートストッキング)
これは単なる重ね履きではなく、再設計された機能システムです。
選手は、それぞれの構造が担う役割を理解したうえで、“自分に最適なソックスシステム”を装備することができる。
この**「選ぶ自由」**こそ、LTSSが提案する次世代のフットボール・ソックスの姿です。
まとめと次回予告
段階着圧の“本来の機能”を、レガースの内側で確実に活かす──
このシンプルな発想の裏には、構造への深い理解と、競技現場での切実な課題意識がありました。
LTSSが示す「着圧は“ふくらはぎの中”で効かせるべき」という思想は、現場で本当に求められる答えから逆算した、唯一無二の構造提案です。
次回・最終回では、着圧インナーストッキング「FS-9000 Buenos Aires」誕生の背景に迫ります。
なぜ“ブエノスアイレス”なのか──その名前に込められた意味とは。
• ▶️ 【次回予告】第5回|なぜ“Buenos Aires”なのか──連戦を支える、ふくらはぎのシステム設計
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関連記事
• ▶️ 第1回|ふくらはぎは“第2の心臓”──着圧インナーの意義
• ▶️ 第2回|着圧って何?──よくある誤解と正しい選び方
• ▶️ 第3回|部位別に考えるサッカー用インナーの役割
フットボールクリエイター 角田壮監
足とシューズの最適化で競技者本来の力を引き出すという視点から世界初のサッカーソックスの構造を分離させ完成されたセパレートサッカーソックスLeg Tool Separation Systemを考案。
「競技者本来の力を引き出す」ためにを理念に、グローバルシーンで実績を残している様々な競技のトップアスリートや競技団体のマネジメントやディレクションで培った「競技力向上のための組織づくり」をはじめ、社会にスポーツが持つ有益な効果を生み出すためにスポーツシステムコーディネーター、スポーツプロデューサー、プロジェクトコンサルタントとして、次世代ニーズを見据えた魅力ある競技スポーツシーンの創出に努めている。
KAKU SPORTS OFFICE MISSION
アスリート思考で心豊かな社会づくりをクリエイトする
KAKU SPORTS OFFICEは、「アスリート思考で心豊かな社会を創造する」をモットーに、競技スポーツに関わる個人・企業・団体の活動や事業を、的確な視点で分析します。そして、言語・文化・音楽・映像・活字といった多様な“シンボル”を活用し、人と人、組織と組織、企業と企業、人と組織・企業といったあらゆるつながりの中から、最大の相乗効果を生み出す組み合わせをコーディネート。新たな利益システムを構築するコミュニケーションコーディネーターとして活動しています。また、創業者・企画者としての精神をもとに、理念や目的を共有できるパートナーの育成や、持続的かつ自走可能な組織づくりを支援するシステムコーディネーターとしても貢献。さらに、競技者一人ひとりが本来持つ力を引き出すメンターとして、競技スポーツの発展にも寄与しています。